midnight in a perfect world

webエンジニアのメモ

「コール」を観る。

コール [DVD]

コール [DVD]

お手本のような、教科書的に綺麗な駄作。すべてが中途半端で、この映画の糞さについて見た人と語り合いたいという気にさせる点で、ある意味優秀な作品。配役はシャーリーズ・セロンとかケヴィン・ベーコンとかダコタ・ファニングとかコートニー・ラブとか結構豪華だし、原作ものらしいし、当たる要素は結構盛り込まれてるのにダメダメ。最初はなかなか面白い設定のクライムムービーだな、と思ったら、終わってみたら、あの設定はなんだったの?とか、意味ないエピソード多くない?とか、突っ込みどころ満載の映画。

じゃあ、ダメな点を完結に2点列挙していこう。

1.24時間、家族ごと誘拐するという設定。

本作の肝だが、子供だけでなくその両親も誘拐し、3組で相互に監視しながら、30分に一度互いに状況を電話し(これがタイトルの由来ね)、金を振込ませるという手法を取る。なるほど、確かに警察に通報する手段がなくなっていいのかもしれない。だが、本作ではちゃんとFBIに通報されている。なぜか?犯人グループがあまりにも手際が悪すぎる。こんな穴だらけの誘拐計画でよく過去4回も成功したもんだと首をかしげたくなるお粗末ぶり。まず、24時間監視するという設定だが、なぜ24時間か全く意味がない。24時間、どう考えても長すぎる。これだけあれば縛り上げてもいなければ誘拐された方は皆何かしらの連絡手段で外部に連絡できるだろうし、実際、両親のみならず、6歳のダコタちゃんまで脱走して無線で連絡している。その24時間中、犯人たちはなんと嫁さんにエロいことを迫ったり、風呂入ったり居眠りしたりする(コートニーラブが演じてるんだが、脳みそ空っぽ感が出てなんか面白い)。無論、その間銃も持たず、人質を拘束しているわけでもない。そりゃ返り討ちに合うだろう。

俺が犯人なら、きちんと人質は縛り上げて武器なんぞ手にできないようにするし、後の現金受け渡しに支障のない程度の拷問をして人質の反抗心をくじく。金だけを奪うプロの誘拐屋ならそうするんじゃないかな?本作の誘拐犯たちは、どこか弱い。皆中途半端に善人ぶってて、人質を中途半端に気遣っており、そこに隙ができている。クライムムービーだったらアッと驚くような完全犯罪ぶりを見てみたいものだが、本作はそれに程遠い。仮に自分が人質だったとしても、こんな状況なら相手を殺すか、逆に人質に取ると思う。何しろ犯人は銃も持たずに人質宅に乗り込んで、人質がたまたま持っていた銃で脅しをかけるような有様なのだ(ケヴィン・ベーコンはこの役を何を感じながら演じていたのだろうか

)。こんな奴楽勝で殺せるし、他の家族が心配なら、犯人の自由を奪ったあと、電話での会話が可能な程度に拷問して芋づる式に他の犯人を締め出す。物語中盤から、犯人たちは急に幼くして無くした娘の話を始め、どうもその死が人質家族の父親の仕事に関係した私怨みたいなことを語りだすが、じゃあ過去の四件の誘拐はなんだったの?的でお粗末すぎる言いわけだし、終いには誘拐した女の子を自分たちの子にしようとか言い出す始末だし、頭が湧いていたとしか思えない状態。

2.無意味なカーアクション

クライムムービーに必要な要素、それはスリルである。うまくいくかいかないか、そこでハラハラしたいのであるが、本作ではそれをカーアクションに求めてしまった。恐らくスポンサーの意向受け入れで起きた悲劇なんだと信じたいが、心理劇だけで十分盛り上げることが可能な設定の中で、なぜか派手なカーアクションを盛り込んでしまった。これは、全く同じことが言える「彼岸島」にも見習っていただきたい。心理戦が見所の物語(のはず)で、急にただのバトルものになってしまう悲しさ。本作の終盤のカーアクションは目を当てられない。人質の夫は自家用機の飛行機で犯人たちの走る高速道路に特攻し、周りを走る善良な市民にお構いなく、自分の子を取り戻すため飛行機を体当たりで突っ込んで大事故を起こす。これ、意味ある?そして嫁はここに来てなぜか犯人を銃撃して撃ち殺す。これも意味ある?盛り上げどころ、間違ってない?

こまかく観ると突っ込みどころは満載なんだが、とりあえずこんなとこ。ちょっと前に見た「アリス・クリードの失踪」の足元に及ばない、最低のクライムムービー。