「さいはての中国」を読む。
これも山形浩生氏のnoteでしった一冊。達者な中国語と人脈を武器に、様々な角度から中国の裏側や実情に迫るルポとなっている。イメージ的にはクレイジージャーニーの丸山ゴンザレスっぽい感じだが、事象の背景にある歴史や文化に明るく、彼よりも少しインテリな感じだろうか。中国に興味を持ちつつも今の習近平や共産党の統治に批判的だし、かといって日本を礼賛して中国を貶めるような書き方でもなくバランス取れた文体で面白かった。また生活風俗の描写も生々しく、生ゴミの饐えた匂いや野暮ったい服装や街並みが五感を通して味わえるような文章にもなっている。
以下、面白かったフレーズ。
・中国はかつての先生王朝の役割を中国共産党がそのまま継承しているので、日本と比べて社会全体の構造が前近代を引きずっている部分が少なくない。
・「中国は過去にアフリカを侵略したことがなく、ただ助けてくれている。だから多くのアフリカ人にとっては中国は親近感を覚える国なんですよ」と語るインテリのナイジェリア人。
・習近平政権下で彼の個人崇拝が急速に進み、「造神(ザオシュン)」と揶揄されている。
・習近平政権の特徴は日本の某総理もびっくりの「お友達人事」にある。
・法治主義の感覚が政府も民衆も共に薄く、上の決めた理不尽なルールを強制されることに慣れている。
・内モンゴル自治区の住民とチベット・ウイグル族はかなり共産党からの扱いに差がある。
・内モンゴルからすると外モンゴルは同胞と感じて朝青龍や白鵬が日本で活躍しているのも応援できるが、使う文字はキリル文字でロシア化し過ぎていると感じる。ただ、自分たちは一方で漢化しすぎているとも感じる。
・カンボジアは中国の属国のようになってしまっている。フン・セン政権は政府の腐敗や人権感覚に薄い中国と親和性が高く多額の援助を受け入れている。