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 「公文書管理」を読む。

公文書管理 ――民主主義の確立に向けて

公文書管理 ――民主主義の確立に向けて

  • 発売日: 2019/10/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
 

昨今の公文書管理の不十分さを基に起きた様々な事件、不祥事を基にして公文書管理とは民主主義の中でどのような機能を持ち、どのように運用されるべきかを日弁連にて法解釈や実例をもとに意見書をまとめたもの。非常に実用的で簡潔で読みやすく面白かった。パネルディスカッションの内容も含まれており、終盤にはやはり民主主義とは、という大きなテーマになっていく。

とりあえず本書内で提言されていて共感して実践していくべきと思った点は以下の通り。

・民意を正しく実現するために、公文書は内閣や議会ではなく、独立した第三者機関での管理が適任である。

・あらゆる意志決定プロセスを公文書として管理し情報公開を徹底していくと、発言が委縮され要の部分がブラックボックス化するリスクがある。発言すべき時に発言しないとリスクや罰則となるインセンティブを構築しなければいけない。文書を残さないことで後で自分の意志決定の誤りは勿論のこと正しさも証明できない、検証責任を果たすことが出来ないということを行政が認識しなければならない。

・行政文書は保存場所が共有フォルダか個人端末かというようなレベルで、「個人メモ」として重要な文書が行政文書ではないと恣意的に判断されて削除されるリスクがある。行政の機能として作成されたファイルは全てバージョン管理と復元できる環境を作るべき。要するに自前のファイルサーバじゃなくてGsuiteを使うべき。

・結局違法でないから問題ない、という開き直りをしているのが今の官邸の態度なので、そもそも法運用が政治活動の質向上や民意反映に寄与しておらず改正の必要があるという議論を盛り上げなければならない。

・森友問題では改ざんに関与した人間の起訴が見送られ、不正に対する自助作用が働いていない。不正行為に対する内部通知の手段をきちんと定める。

・公文書に対して、条例を制定して管理していくことの必要性を認識しないと政策としての優先度が低くなり、予算確保して改善していく動きが遅れる。改正に向けた動きが必要である。

・官僚のセクショナリズムのお陰で、自分に都合よい形で行政文書を残そうとするインセンティブが生まれ、市民は利害対立する複数の機関の行政文書を比較することで真実が見えてくることがある。同じ意志決定でも複数プレイヤーの立場を参照することが重要である。